「音楽葬」と「弔い」や古代葬儀との関係

最近、特に注目されている『音楽葬』というスタイルがあります。
生演奏を葬儀にとりいれて、故人を見送る葬送のスタイルですが、これが太古以来の葬儀の形である事をご存知の方は少ないようです。

一般に音楽は華やかなイメージがあるので、葬儀との違和感を持ち、そのために新しい葬儀スタイルと受けとられるケースもあるようです。ところが、この『音楽葬』は宗教や宗派を越えて行われてきた、長い歴史を持った葬儀のスタイルなのです。

 
バイオリンとチェロの二重奏(スペースアデュー提供)

『弔う』という言葉があります。この言葉の語源は実はその音楽葬の歴史を物語る言葉でもあります。太古の時代より、人が亡くなった時にはそのお墓に「弓」を「刺し」て音楽を奏で個人の魂を鎮め、追悼の舞をしたそうです。その様子、すなわち「弓」を「|」・・・刺す」が「弔」という漢字になったといわれています。
まさに、音楽が弔いの儀式の中でどれほど大切なものであったかを物語っています。

また、世界中の葬儀スタイルを見渡しても、音楽がいかに葬送の儀式の重要な役割を担ってきたかは明白です。ですから、音楽葬は時代や国を越えて人類に引き継がれてきた表現のツールであり、葬儀の原点なのかも知れません。

日本には、万葉の時代から葬儀に「魂ふり」という儀式ががありますが、これはまさしく鎮魂の歌を唱え、あるいは鎮魂の舞踏を行うことだったようです。


また、葬儀の音楽には、鎮魂という目的以外にも、ご遺族や参列の方たちの悲しみをサポートする側面もあります。生演奏からはアルファ波が発生し、悲しみに傷ついた『送る者たちの心』を癒し、おだやかにする手助けをしてくれます。故人の愛した音楽や個人の生きた時代の音楽で会場を満たす事により、人々の故人に対する思いをひとつにし、音楽とともにそれぞれのこころに思い出として納まる事も、故人に対する供養になります。

では、実際にはどのように音楽葬をとりいれていけばよいでしょうか?一般の仏式葬儀でも、生演奏をとりいれる事ができます。お経と生演奏?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にとりいれてみると驚くほど、現場の雰囲気になじみます。ご遺族や参列者の方達の評判もなかなかのようです。無宗教の葬儀であれば、なおさら音楽はお経に代わる重要なな要素となるのかも知れません。
また、通夜、告別式以外でも、『偲ぶ会』などでも音楽は重要な役割を担ってくれます。偲ぶ会自体をコンサートホールで行うケースも最近は増えていますし、メディアなどで見かける著名な方達の偲ぶ会には、フルオーケストラがはいる事もしばしばです。一般の場合はそこまでの事はする必要はありませんが、たった一本のフルートの音色が、故人の葬送にどれだけ大きな役割を担うかは、体験した方達であれば実感されている事でしょう。

実際に仏式に生演奏をとりいれた遺族の方達からは『いれてよかった』『よい葬儀になった』『会葬者の方達からもよかったという声がたくさんあった』などの生の声もたくさんあがっています。

昨今、このように葬儀における音楽の重要性が見直されていますが、実際にはどのような事ができるのか?どのように手続きをすればよいのか?という事について、最近の音楽葬事情についてご紹介しましょう。

■生演奏をとりいれる際のチェックポイントです
音楽事務所について
葬儀専門のノウハウを持った音楽事務所に依頼する事
リクエストに対する対応能力がある事務所に依頼する事
楽器編成のバリエーションをたくさん持っている事務所に依頼する事

●演奏依頼について
選曲はできるだけ故人の人生にちなんだものを選ぶ事がポイントです。そのためには、遺族側の希望をできるだけしっかりと伝える事が大切です。好きな曲や好きな歌手などがあれば、それを曲目にいれるのもよいでしょう。
故人が楽器を演奏していた場合などは、その楽器を使った編成にするのも一案です。また、特に希望がなくても、故人のデータはできるだけ細かく正確に事務所に伝える事が大切です。
故人の生まれた年や故人の活躍した時代などの曲を演奏することで、故人の人生が鮮やかにクローズアップされます。葬儀専門の音楽事務所はそのあたりの対応には慣れていますので、必ず故人にふさわしい選曲や楽器編成を提案してくれるはずです。さらに、故人の職業や性別、趣味なども選曲の大きなヒントになりますから、そういうデータも伝えておくとよいでしょう。

また、細かい事がわからなくても、『静かなイメージ』『きれいなイメージ』『やさしいイメージ』など故人につながる漠然としたイメージだけでも、個性のある選曲のヒントにつながりますから、大枠のイメージを伝えるだけでもよいでしょう。さらに、原曲のイメージが『葬儀にふさわしい、ふさわしくない』はあまり気にする必要はありません。信頼のおける葬儀専門の音楽事務所でしたら、『どんなジャンルの曲でも葬儀の雰囲気にあった編曲』をしてくれます。楽譜がない曲でも、希望の楽器編成にあわせて、また葬儀のイメージに合わせた楽譜を書いてくれるので、故人のためのオリジナル演奏となり、なによりの供養になるはずです。

以上の条件を満たした音楽事務所はそれほど多くはありません。せっかく生演奏を希望しても、おきまりの曲しか対応できなかったり、特定の楽器しか使えなかったりでは、『音楽葬』の本来の意味をなしません。
大切なのは、信頼のおける葬儀音楽のプロに依頼するか、そういった音楽事務所と関係をもつ葬儀社を選ぶという事でしょう。

音楽葬に興味がある方、また音楽葬を希望する場合は下記まで。